ニュース、そういうことか

普通の中年サラリーマン、世の中いろいろたいへんですが、なんとかなるでしょう。比較的楽観的な性分なので...。

立憲民主党 枝野さんの悩み ~ サラリーマンが見る野党共闘のよしあし ~

10月31日の衆議院選挙、与党への不満に加え野党共闘という新たな動きもあったので何か起きるかも、と少し期待し20時の開票速報を待ちました。しかし開票開始30分、野党勢力が票を伸ばすも与党は過半維持という大勢が伝えられます。やっぱりな、とテレビを消しました。ところが...。
ん? 翌朝、朝のニュースを見ると数字が思ってたのと違う、自民は思った以上に議席を伸ばし、立憲民主が100議席割れ、枝野さんの惨敗を知りました。
立憲民主の共産党との共闘は悪い作戦ではないと思っていたのでこの結果は意外でした。ただサラリーマン目線でいろいろ考えてみると問題も見えてきますね。

小選挙区選挙必勝法

1994年の法改正で小選挙区比例代表並立制衆議院に導入されました。その良し悪しはいろいろ言われていますが、一般的には小選挙区制は死票が多いと言われています。例えばこんな例はどうでしょう。

候補者 得票率 結果
  • Aさんが当選
  • Bさん、Cさんは一定の支持(各30%)を得ているが落選
  • Bさん、Cさんの得票の合計(60%)はAさんの得票(40%)を上回る
Aさん 40% 当選
Bさん 30% 落選
Cさん 30% 落選

典型的な小選挙区の弊害が現れていますね。60%の民意が国政に反映されません。
しかしここでBさんがCさんに働きかけます。"Aさんより私の方がましでしょ? Cさんのこの政策は取り入れるので私の応援に回ってもらえませんか?" (Bさんばかりにメリットありそうですが)Cさんにしてみてもこのままでは絶対に当選できないので、悪い話ではありません。もしこのBさんの提案にCさんが乗ると結果は大きく変わります。

候補者 得票率 結果 => 候補者 得票率 結果
Aさん 40% 当選 Aさん 40% 落選
Bさん 30% 落選 Bさん 60% 当選
Cさん 30% 落選 (不出馬) - -

勿論、Cさんの支持者が100%Bさん支持に回るとは限りませんが、Cさんの政策がAさんよりもBさんに近いのであればその多くがBさんに行くと期待できます。
枝野さんが考えたのはまさにこの作戦ですね。いい作戦だと思います。

枝野さんの誤算

この必勝の作戦、報道されている通りいくつかの小選挙区では見事に成果をあげました。東京8区(自民 石原伸晃 vs 立民 吉田晴海)、香川1区 (自民 平井卓也 vs 立民 小川淳也)などが好例でしょう。しかしこれらの劇的な勝利にも関わらず立憲民主党全体としては議席を減らしてしまいます。なぜでしょう。
どうも今回の野党共闘、特に共産党との共闘は立憲民主党のコアな支持層の一部には受け入れられなかったようです。特にその傾向は比例代表で顕著で、小選挙区で躍進させた議席数を大きく上回る議席数を比例代表で失っています。前回、比例代表立憲民主党に投票した支持者の一部が、今回は立憲民主党に投票しなかったのです。由々しき事態ですね。選挙はほんと難しい...。

立憲民主党衆議院選挙獲得議席
  前回 今回
小選挙区 48 57 (+9)
比例区 62 39 (-23)
合計 110 96 (-14)

企業の中の自民、民主、そして共産

この立憲民主の支持者離れ、思いあたる節があります。
うちの会社には連合系の労働組合があり、一般社員は基本的にその労働組合に所属します。そして社内で成果を上げて出世して課長になると労働組合を離れます。課長以上の管理職は自民党支持団体への入会を促されることもあるようです。言ってみれば社内に民主系勢力と自民系勢力があって、社内のランクが変わるとその所属先を変えるというある種のエコシステムがあるということです。ストライキが死語となった今、労働争議もなく労使は良好な関係にあり本気で対立することはまずありません。誤解を恐れずわかりやすく言うと、民主系と自民系が社内で仲良く共存している感じです。(ちょっと言い過ぎでしょうか。)
一見平和に見える社内の政治勢力ですが、ちょっとしたスパイスが効いています。共産党労働組合です。歴史や経緯はよく知りませんが私の理解、共産党員である社員は連合系労働組合には入らず、共産党労働組合に所属するようです。小規模ながら社内に共産党労働組合を持つ会社もあります。そしてこれら2つの労働組合、敵同士というわけではないのでしょうが、主義主張が異なり、組合員獲得、組織維持という利害対立の要素もあって、決して良い関係ではありません。
しかし今回、枝野さんはこの連合系組合員の皆さんに共産党労働組合と手を組み一緒に戦いましょう、とおっしゃいました。状況考えるとこれを容易に受け入れられないという気持ちは理解できます。メディアでも連合やトヨタ労組が難色を示していることが繰り返し報道されていましたね。
必勝の策も諸刃の剣だったんですね。

まとめ

最初は野党共闘に一定の価値があったとかなんとか代表の座を維持、この作戦をもって次の選挙でリベンジ、というお気持ちだったのでしょうが、やはり惨敗の責からは逃れられず、枝野さんは代表を辞任されました。新しい代表はこの諸刃を持つ策をどうするのでしょうか。
私個人の意見は、小選挙区制である以上、選挙のテクニックとしてこの策は有効だし、こうでもしないとなかなか政権交代を担える勢力は生まれてこないと思います。ただ今回は作戦があまりにも前に出過ぎ、勝つために手段を選ばない感が全面に出てしまったのが敗因かなと思います。
月並みな言い方ですが、本気で政権与党を目指すなら、政策を磨き実行力を示した上で、勝つための手段を熟慮し次回に臨んで欲しいと思います。最長でもあと4年しかないですからね...。